阪急電鉄株式会社

YYSystem導入で実現!阪急電鉄の「誰もが利用しやすい」駅環境づくり

#鉄道駅
#多​言語​対応
#字幕ディスプレイ

鉄道業界においては、訪日外国人のお客様、年齢層が高いお客様、多様な特性を持つお客様など、すべての人が安心して利用できる環境づくりが重要です。安全・快適・迅速な輸送サービスに加え、多様化するニーズに応えることが、サービスの質向上に直結します。

京阪神エリアを中心に鉄道事業を展開する阪急電鉄株式会社(以下、阪急電鉄)は、長年にわたり顧客から高い評価を獲得している接客力の高い企業です。鉄道現場におけるユニバーサルコミュニケーションの実現に向け、積極的に取り組んでおり、株式会社アイシン(以下、アイシン)が提供する意思疎通支援システムYYSystemを導入し、その効果を大いに実感されております。

今回は、導入を担当した阪急電鉄都市交通事業本部運輸部お客様サービス担当の藤田 淳士様(以下、藤田様)に、導入の背景や効果、今後の展望についてお話を伺いました。

概要

課題

  • 駅改札窓口における訪日外国人のお客様への応対環境の改善余地
  • 聞こえづらい方への情報伝達において、筆談によるコミュニケーションの限界増加

 

導入機能・使用事例

  • 「YYレセプション」を活用して据え置き型のディスプレイに投影
  • リアルタイム音声認識と自動言語判定・翻訳機能を活用

 

効果

  • 訪日外国人のお客様との言葉の壁を感じないスムーズなコミュニケーションを実現
  • 音声を聞きとることが困難なお客様への応対が迅速・的確になり、サービスの質と効率向上
  • 顧客満足度(CS*)向上とユニバーサルデザイン推進への貢献 *Customer Satisfactionの略

 

多言語対応とユニバーサルデザインへの挑戦

──駅改札窓口における訪日外国人や音声を聞きとることが困難なお客様の応対について、どのような課題がありましたか?

藤田様:私たち阪急電鉄は、顧客満足度調査において、近郊鉄道の部門で長年にわたり高い評価をいただいています。しかし、多様化するお客様のニーズに応えるにはさらなる努力が必要で、いくつかの課題が浮かび上がっていました。

まず、訪日外国人旅客の受け入れ環境整備について、2025年4月に大阪・関西万博が開幕し、訪日外国人の更なる伸長が見込まれている中で、その応対力向上が求められております。次に、障がいのあるお客様への配慮について、2024年4月1日より障害者差別解消法* の改正* もあり、民間事業者の合理的配慮が義務化されました。

これを受け、障がいの有無に関わらず共生社会の実現が求められ、公共交通事業者におけるバリアフリー施策の重要性が高まっております。以上のことから、鉄道現場におけるユニバーサルコミュニケーションの実現に向けた取り組みとして、新たな意思疎通支援システムを検討するに至りました。

* 障害を理由とする差別の解消推進に関する法律
* 参照:内閣府「改正障害者差別解消法が施行されました

──訪日外国人の受け入れ環境整備について、これまでどのような取り組みをなされていたのでしょうか?

藤田様:当社では、2019年より車内多言語放送装置を順次設置し、通常時は2か国語(日本語・英語)、異常時は4か国語(日本語・英語・中国語・韓国語)で車内案内放送を行っているほか、2023年にはAI通訳機を全駅へ整備し、受け入れ環境整備に努めてきました。

従来のツールでは、日常的なご質問への応対は可能であっても、例えば人身事故や災害時など突発的な事象が発生した際に、現在の運行状況や今後の運転再開見込みなど、複雑な説明を求められる場面では意思疎通が難しくなっていました。そのためお客様の期待や要望に沿えていないという課題を感じておりました。

──導入前に従業員の方の業務負荷の観点で課題はありましたか?

藤田様:そうですね。駅係員の業務内容については、駅改札窓口でのお客様応対のみならず、車椅子をご利用のお客様の介助や券売機・精算機の締め切り作業等、多岐にわたりますが、少子高齢化による労働人口の減少が想定されている中で、駅係員が働きやすい環境作りもキーワードの1つとなっております。

例えば、聴覚に障がいのあるお客様が駅窓口にお越しになられた場合、主に筆談で応対しておりますが、ご案内内容が長文となった場合、どうしても案内に時間を要してしまいます。このような状況だと、お客様をお待たせするだけでなく、限られた要員で多岐にわたる業務を遂行する中で限界があると感じていました。

また、訪日外国人のお客様への応対についても、多言語教育を行う時間的な余裕もない中で、顧客満足度を担保しつつも効率的に業務を行うための新たな仕組みが求められていました。

そこで、顧客満足度(CS)向上は勿論のこと、従業員満足度(ES*)向上にも資する取り組みとして、生成AI技術を活用した新たな意思疎通支援システムを検討するに至りました。

* Employee Satisfactionの略

音声認識と翻訳の精度の高さからYYSystemを選んだ

──YYSystemを導入するきっかけについて教えてください。

藤田様:他社様から共同実証事業の提案をいただき、そこで初めてYYSystemを知りました。

──導入を決定する際、どのような点が決め手になりましたか?

藤田様:決め手は3点あります。まず音声認識の精度です。日本語の音声を正確に認識する能力が非常に高く、駅係員とお客様との会話の意味をしっかりと捉えることができました。

次に、音声認識した内容を画面表示するまでの速度です。会話のテンポを崩さないスピードで結果が表示されるため、お客様を待たせることがありません。

そして、翻訳の精度も特筆すべき点です。生成AIを活用することで、ただ直訳するのでなく、自然な言い回しで意図が正しく伝わる翻訳が可能となっています。英語だけではなく、中国語などの他言語でも高い翻訳精度を誇るのが、YYSystemの大きな強みだと感じています。

──実際に導入するまでの流れを教えていただけますか?

藤田様:YYSystemを活用することで円滑なお客様応対が実現可能か検証すべく実証実験を行いました。本実証にあたっては、当社線の玄関口であり、訪日外国人のお客様も多く訪れる大阪梅田駅を選定し、2024年7月から約2か月間試験運用を行いました。

この期間中、現場の駅係員やお客様からのフィードバックを集め、YYSystemの実用性や効果を検証しました。その過程で、アイシンさんからも多くのサポートや改善提案をいただき、より現場に合った運用方法を模索していくことができました。

YYSystemによって係員の業務負荷の軽減を実現した

──実際にYYSystemの導入後、どのように活用されていますか?

藤田様:現在YYSystemを主要駅を中心に合計9箇所に導入しており、主に対面カウンターでのご案内において、お客様と駅係員が一対一で会話をする際に使用しています。

──具体的にはどのような場面で活用されているのでしょうか?

藤田様:例えば、お忘れ物・紛失物対応の場面です。お客様より、お忘れ物・紛失物について問い合わせを受ける場合、物品の詳細や紛失時の時系列をお伺いする必要があります。こうした複雑なやり取りではYYSystemの音声認識と翻訳機能が非常に役立っています。そのおかげで、応対時間が短縮されるだけでなく、駅係員の負担も軽減されました。

──聴覚に障がいのあるお客様への応対ではどのように活用しておりますか?

藤田様:YYSystemを活用することで、お客様が読んで理解しやすい文章を迅速に提供することが可能になりました。

駅係員からは「道案内を筆談でとお申し出された聴覚に障がいのあるお客様応対に活用したところスムーズに案内できた。」「高齢者への案内時に声量を調整する必要がなく、他の駅係員の案内を妨げることがなくなった。」といった好意的な声が挙がっております。

現場の声を反映し進化するYYSystem

──YYSystemの導入にあたって、アイシンからのサポートについてはいかがでしたか?

藤田様:導入の過程で、アイシンさんのサポートには非常に助けられました。実証実験中に現場の駅係員からUI改善や言語選択ボタンのサイズ変更などの要望があった際に迅速にご対応いただけました。ディスプレイを設置する際のレイアウトについても、現場の使いやすさを考慮して柔軟に対応してくださり、とても助かりました。

「現場の使いやすさを考慮して柔軟に対応してくださり、とても助かりました。」
阪急電鉄都市交通事業本部運輸部お客様サービス担当 藤田 淳士様

──導入後の現場の方々の反応はいかがでしたか?

藤田様: 最初は現場の駅係員も新しいシステムに対して懐疑的な部分がありました。しかし、私自身も現場に頻繁に足を運び、一人ひとりの駅係員と直接話をして導入背景や目的を丁寧に説明しました。さらに、若手のメンバーには特に期待を寄せ、周囲に使い方を伝える役割をお願いしたことで、現場全体にスムーズに浸透していきました。

──導入後の現場の方々の反応はいかがでしたか?

藤田様:実証期間中において、「操作性」「音声認識精度」「翻訳精度」の3つの項目について5段階評価でアンケートをとりました。その結果、8割以上の駅係員が評価の高い4または5の高評価をつけてくれました。導入後も、非常に高い満足度で使ってくれていると思います。

──駅係員の方々が、YYSystemをどのように活用されているか具体的なエピソードを教えていただけますか?

藤田様:例えば、聴覚に障がいのあるお客様には、日本語モードで対応しますが、訪日外国人のお客様の場合には、英語やフランス語に切り替えて対応するなど、状況に応じて柔軟な運用を行っています。

また、輸送障害発生時などの異常時には、あらかじめ入力した内容(例:「現在、人身事故発生のため運転を見合わせております。運転再開は、○時○分の見込みです。」)を固定表示し、次々に訪れるお客様にも迅速に情報を伝えています。

他にも、応対が少ない時間帯においては、透明ディスプレイの特性を活かし、当社施策にまつわるPR動画を放映し有効活用するなど、独自のアレンジを加えた使い方をしている駅もあります。

ユニバーサルデザインの実現に向けて広がる可能性

──YYSystemを今後どのように活用していきたいとお考えですか?

藤田様:現時点では主に対面カウンターでのご案内に使用していますが、これを一つの足掛かりとして、将来的には音声のみの案内情報の文字化、駅係員呼び出しインターホンへの文字表示(遠隔対応)など、YYSystemの更なる活用を検討していきたいと考えております。

これにより、人手が足りない時間帯でもお客様に安心感を提供できるようになると期待しています。誰もが使いやすいユニバーサルデザインを追求していきたいです。

──YYSystemはどのような企業にお勧めできるとお考えですか?

藤田様:YYSystemは、鉄道業界に限らず、さまざまな場面でのコミュニケーション課題を抱える企業や社会にとって非常に有用だと感じています。特に、訪日外国人への応対を含む多言語対応が必要な企業や、聴覚に障がいのある方へスムーズなコミュニケーションを求める企業、そのような環境づくりを目指す社会に有効なシステムです。

人手が限られる中で、顧客満足度(CS)を向上させたいと考えている企業にとっても、YYSystemは大きな助けとなるはずです。

企業情報
企業名:
阪急電鉄株式会社
業種:
都市交通事業
従業員数:
約2,219名(2023年現在)
会社の特徴:
京阪神エリアを中心に鉄道事業を展開しており、お客様に 「安心・快適」、そして
「夢・感動」をお届けすることで、喜びを実現し、社会に貢献しています。