株式会社アイシンが自社開発した音声認識システムYYSystemは、聴覚障がいをお持ちの方にとってさまざまなシーンで活用されています。このシステムを自社内で導入し、働きやすい環境づくりを実現して、業務効率化にもつながった事例をご紹介します。
今回は、総務部 企画・総務室 総務グループに所属し、聴覚に障がいを抱えている鵜飼 亮佑さん(以下、鵜飼さん)と、その上司である総務グループ長の池田宏司さん(以下、池田さん)にお話を伺いました。
※本インタビューもYYSystemを活用し実施しています。
課題
- 筆談によるコミュニケーションに伴う時間的、精神的負担の増加
- コロナ禍でマスク越しに口の動きが見えずコミュニケーションが困難に
- 外部の業者とのやり取りを一人で対応することへのハードル
導入機能・使用事例
- iPhoneでも使える「YYProbe」を活用したリアルタイム文字起こし
- 伝わりにくい場面ではキーボード入力でメッセージ表示
効果
- 仕事以外の会話によるコミュニケーションの拡大、笑顔で働ける職場環境の実現
- 社外のクライアントや業者との対応を一人で遂行できることでの生産性の向上
- 部下の教育や複数業者との交渉を担うことでの業務範囲の拡大
コミュニケーションに悩み、業務にも影響が出ていた導入前
──YYSystem導入以前、鵜飼さんはどのように業務を遂行されていたのでしょうか?当時の課題について教えてください。
鵜飼さん:まず私の業務領域としては、総務部の建屋管理として、オフィスや社用車のメンテナンスなどさまざまな業務を担当しています。その中でYYSystemを導入する前は、伝えたい内容を紙に書いてコミュニケーションを取っていました。いわゆる筆談ですね。
ただ、それだとどうしても時間がかかってしまいますし、相手によっては手間だと感じられてしまうこともあり、コミュニケーションがうまく進まないことが多かったです。
池田さん:特に対面のやり取りではないとコミュニケーションが難しい場面がありましたね。鵜飼さんは相手の口の動きを見て意思疎通を図ることもしておりましたが、コロナ禍でみんながマスクを着けていたため口元が見えなくなってしまい、それも難しくなりました。
結果的に、鵜飼さん自身が抱えるストレスも増えていたのではないかと思います。
──社外とのやり取りでも課題があったとお聞きしましたが、具体的にはどのような状況でしたか?
鵜飼様:はい、社外の業者さんとのコミュニケーションも難しかったです。建屋管理の仕事をしていると、空調や床、壁、電気工事などさまざまな業者さんとやり取りが必要になります。
ただ、初めて会う方とのコミュニケーションは特に意思疎通のハードルが高く、どうしても一人で対応することが難しい状況でした。
池田さん:その結果、コミュニケーションの取り方において限界を感じる場面が多かったですね。特に、業者さん側で担当者が頻繁に変わることもあり、毎回新しい方に一から説明する必要がある点も本人の負担になっていたと思います。

「初めて会う方とのコミュニケーションは、どうしても一人で対応することが難しい状況でした」
株式会社アイシン 総務部 企画・総務室 総務グループ 鵜飼亮佑さん
障がい者雇用を進める中で生まれたYYSystem導入のきっかけ
──YYSystemを導入するきっかけは何だったのでしょうか?
鵜飼さん:障がい者雇用を進めているグループ会社の「アイシンウェルスマイル」からの提案がきっかけでした。「YYSystemを使ってみたらどうか」と声をかけてもらい、実際に試してみることになりました。
池田さん:アイシン全体として障がい者雇用に力を入れている中で、YYSystemの導入が検討されました。特に鵜飼さんが直面していたコミュニケーションの課題を解決できる可能性があると感じて、試用を始めました。。
──実際に導入を決めた段階では、どのような期待があったのですか?
池田さん:やはり、鵜飼さんが一人で業務を遂行できる場面を増やすには、従来の筆談や口元の動きを確認していたところから、YYSystemの導入を考えていました。
実際に使い始めたところ、業務や関係するメンバーの幅が広がる可能性をすぐに感じたため、本格的に導入することを決めました。
日常会話から業務まで幅広く活用されるYYSystem
──現在、YYSystemはどのように活用されていますか?
鵜飼さん:普段はスマートフォンにインストールしている「YYProbe」の字起こし機能を活用しています。特に会議や打ち合わせなどでは、相手の話している内容がすぐに文字として表示されるので非常に助かっています。
池田さん:鵜飼さんは仕事だけでなく、仕事とは関係ない話にもYYSystemを役立てています。例えば、日常的な会話や世間話にも利用していますね。これがきっかけで、同僚たちとのコミュニケーションが以前よりも自然に広がり、笑顔も増えたと感じています。

「YYProbe」のリアルタイム文字起こし機能を活用している様子
──リアルタイムの文字起こし以外には、どのような機能を使用されていますか?
鵜飼さん:聴覚障がいをお持ちの方の場合、発音に特徴がありうまく伝わらない場合があります。YYSystemのキーボード入力機能で、自分の言いたいことをキーボードで入力すると、それが相手にわかりやすいメッセージとして表示されるのでとても便利です。
文字起こしに利用しているシステムやデバイスからメモ帳アプリなどに切り替える必要なく、同じアプリ内で完結できるためスムーズに会話ができ、助かっております。社内外を問わず、必要に応じてこの機能を使いながらやり取りをしています。
池田さん:特に外部の方とのやり取りの際に、鵜飼さんがこの機能を活用している場面が多いですね。自分で入力したメッセージを視覚的に表示できますし、相手にもスムーズに伝わるので、非常に効果的だと思います。
コミュニケーションの幅が広がり自信と成長につながった導入の効果
──YYSystemの導入後、どのような変化がありましたか?
鵜飼さん:一番大きな変化は、仕事の話だけでなく世間話や日常の話ができるようになったことです。筆談では一つひとつの会話に時間がかかり、結果的にコミュニケーションが仕事に限られていました。
YYSystem導入後は、同僚と気軽に会話ができるようになり、働くモチベーションの向上にも繋がりました。
池田さん:そうですね、コミュニケーションの幅が広がったことで、周囲の人たちから鵜飼さんに話しかける機会も自然と増えたように感じます。職場内でのやり取りがスムーズになったことで、鵜飼さんが社外のクライアントと一人でやり取りをする場面も増えてきました。
──社外での対応もスムーズに進められるようになったのですね?
鵜飼さん:はい。社内でYYSystemを使ってコミュニケーションが取れたことで、自信がついて社外でのやり取りも不安がなくなりました。
YYSystemを導入する以前は一人での対応が困難でしたが、現在では業務で関わるさまざまな業者さんとでも一人で対応することが当たり前になっています。
池田さん:以前は、業者さんとの打ち合わせも、補佐として私が同席する場面が多かったのですが、今では鵜飼さんが一人で打ち合わせを進めることが増えています。
さらに、単に情報を伝達するだけではなく、複数の業者との交渉を行いながらプロジェクト全体を取り仕切るといった、鵜飼さんを起点に業務を進めていく場面も出てきました。

YYSystemを活用し外部の方との打ち合わせをする鵜飼さん
──業務の範囲が広がる中で、新たな役割も担っているそうですね。
池田さん:そうなんです。最近では、鵜飼さんが部下の指導をする場面も増えてきました。新入社員の教育係として活躍してくれております。こうした役割を通じて、鵜飼さん自身の成長がチーム全体にとっても良い影響を与えていると感じます。
鵜飼さん:YYSystemのおかげでコミュニケーションの取りやすさが大きく変わり、仕事に対する自信もつきました。「俺に任せろ」と言えるぐらい、精神的にも前向きになれたと思います。

「YYProbe」でリアルタイム文字起こしをしながらコミュニケーションを取る様子
個人の可能性をさらに広げるYYSystemの今後の期待
──現在YYSystemを活用する中で、さらに改善してほしい点や新たな期待はありますか?
鵜飼さん:私は建屋管理の仕事柄、施設内を移動することが多いのですが、スマートフォンで画面を見ながら歩くのは危険なため見ないようにしています。
移動中もコミュニケーションが取れる、例えばメガネ型のデバイスで、視界に文字を投影できる仕組みがあれば嬉しいですね。
(現在は、視界に文字を投影できる「AiLENS」というスマートグラスが登場。※2026年8月追記)
池田さん:確かに、私たちの会社では安全面の観点から、歩きながら画面を見ることが厳しく制限されています。そうした環境でも使いやすい工夫があるとさらに便利だと思います。
──今後の技術発展による機能拡張にも期待できそうですね。
池田さん:それだけでなく、発音に特徴のある方の言葉も文字起こしできる機能も重要です。聴覚障がいをお持ちの方で、話し方に特徴のある方でも、言葉を正確に認識して文字起こしできるようになれば、さらに多くの人が活用できると思います。※
※株式会社アイシンでは、2025年3月現在、発音の癖を学習させて自分専用の言語モデルをつくるマイエンジンを開発中
鵜飼さん:そうですね。私も、YYSystemがあれば自分と同じような課題を抱えている人の役に立つと思います。もっと多くの職場や場面で使われるようになり、コミュニケーションの幅を広げられる方が増えるといいなと思っています。
コミュニケーションに課題を抱える職場にこそ活用してほしい
──YYSystemをどのような企業や人に勧めたいと思いますか?
鵜飼さん:私のように、日常や業務においてコミュニケーションが取れなくて困っている人にぜひ使ってほしいと思います。人と会話ができずに、スムーズなコミュニケーションを取れないという課題を抱えている方にとって、YYSystemはとても心強いシステムになるはずです。プライベートでも周囲の人ともっと話したいと考えている方にも役立つと思います。
池田さん:聴覚障がいをお持ちの方だけでなく、さまざまな理由でコミュニケーションに課題を抱える人がいる職場にとって有用だと思います。それからYYSystemには会議などでの議事録作成機能もあるので、業務効率化やコスト削減にもつながるのではないでしょうか。議事録を一から起こす手間が省けるため、どのような業界でも活用の余地があるかと思っております。
──特にコミュニケーションに課題を感じている職場にとって、大きな助けになりそうですね。
池田さん:その通りです。もともとは聴覚障がい者支援として開発されたシステムになりますが、今ではそれにとどまらず、働きやすい環境づくりを整え、業務全体の効率化に貢献できるシステムだと感じています。
