
YYSystemとは?──全社展開の試みと苦悩
「聞こえに不安がある方が、コミュニケーションで取り残されないように」──。
誰もが「いつでもどこでも誰とでも会話できること」を目指し、音声発話や環境音を可視化するアイシン独自のアルゴリズムをコアとした意思疎通支援アプリケーション「YYSystem」。
多くの聴覚障がい当事者様(以下、当事者)や法人企業様に活用されている。
前回の記事では、YYSystemが誕生し、実証実験を経て“本当に役立つプロダクト”へと育っていった背景をご紹介しました。
今回は、一部の工場や部署にとどまらず、“アイシン全体”へと展開するまでの道のりについて、引き続き当時人事部・日下さん(現在はYYSystem事業推進部)にお話を伺いました。
(「キヨキヨさん」としてもXやnoteで発信されているため、以下キヨキヨさんと記載します)
現場には「工夫」があった。でも、公平な環境が必要だった
キヨキヨさんによると、YYSystemのような音声認識ツールは、正式導入前から一部の職場で独自に活用されていたといいます。
「聞き取りが難しい社員のために、市販の音声認識ソフトを購入して使ってくださっている職場もありました。ありがたいことに、現場レベルでは温かい工夫がなされていたんです。」
ただ、それは“その職場だからできたこと”。
対応の有無によって情報格差が生まれ、働きやすさに大きな違いが出てしまう。人事として、その状況を放置することはできませんでした。
「誰かの善意に頼るのではなく、会社として“仕組み”で支えるべきだと感じました。」
さらにキヨキヨさんは、当事者の心理にも触れます。
「“支援してもらう側”という構図になってしまうと、当事者の方がどこかで申し訳なさを感じてしまうんです。上下関係のようなものが、知らず知らずのうちに生まれてしまう。
でも、人の手ではなく“テクノロジーが支える”ことで、フラットな関係性がつくれると思うんです。」
それが、真に公平な職場づくりを行うための出発点でした。
「現場の今」を可視化して伝える
全ての工場でYYSystemの実証実験を進めており、いい結果が得られていた。
しかし部長や役員に全社正式展開の提案を持ち込んだ当初、反応は決して前向きなものではありませんでした。
「今なくても困っていないのに、なぜ多額のコストを?」
「費用対効果はあるのか?」
キヨキヨさんが注力したのは、“現場の今を可視化すること”でした。
孤立、伝達ミス、情報格差といった実態を、数値や事例をもとに丁寧に説明。
そのうえで、手話とYYSystemが互いに役割を補い合う存在であることを前提に、
手話通訳の派遣コストとYYSystemの導入費用を比較し、継続利用を前提にすれば安定的かつ低コストであることを伝えました。
同時に、数字では表せない「意識や風土といった見えない壁」も丁寧に言語化しました。
・「報連相が成立していない職場がある」
・「会社のルールが伝わらず、トラブルにつながっている」
・「“会社の一員として扱われていない”と感じる社員がいる」
もうひとつ大きな工夫があった。
”実際に当事者本人を会議の場に同席してもらった”のです。
「どんな会議に出ていて、どれだけ理解できているのかを、ご本人の言葉で正直に語っていただきました。」
さらに、
「聴覚障がい当事者が活躍できる場が企業の中で増えてきており、自社の環境が整っていなければ会社の魅力を感じてもらえない。優秀な人材の流出にもつながる」と強調。
「活躍できる環境がなければ、会社が選ばれなくなる」——これは人事だけでなく、経営にとっても重要な論点でした。
また、法定雇用率といった制度的な背景についても丁寧に説明。
そのうえで、形式的な対応ではなく、
一人ひとりが働きやすい環境を実際に整えることの重要性を強調しました。
こうした総合的な視点から、
YYSystemは単なる支援ツールではなく、
組織全体の働きやすさを底上げするための仕組みであり、導入は企業の未来への投資である
と訴えたのです。
一度通った企画が、また削られる
ようやく導入の承認が下りた——そう思った矢先、新たな壁が立ちはだかります。
年度途中の予算見直しです。
「まだ端末が納品されていないなら、台数を減らせないか?」
「3カ年計画にできないか?」
新しい取り組みほど削られやすい。
それが、大企業における現実でした。
それでもキヨキヨさんは、繰り返し伝え続けました。
「この人数分でなければ意味がない。誰かだけが使える環境では、不公平が再び生まれてしまう。」
何度も何度も説明を重ね、社内での合意形成につなげていったのです。
全社導入、決定
こうして、YYSystemは正式に社内導入が決定。
当事者全員に1人1セットを配布し、対象は17工場および事務・技術拠点7カ所を含む、計266人にまで拡大しました。
障がい者手帳の有無にかかわらず、医師の診断書などにより支援が必要と判断された方にも、面談を経て展開を進めました。
導入にあたっては、“現地での説明会”を実施。
スマートフォンの基本操作からYYSystemの設定・活用方法まで丁寧に説明しました。
説明後はマニュアルやQ&A集を展開し、地道に支援を続けながら運用定着を図りました。
こうして、会社としての“仕組み”をつくることができたのです。
最後に──導入に悩む誰かの一助になれたら
「社内にコミュニケーション支援のニーズはある。だけど、サービスを導入するには想像以上に壁がある。」
そんな悩みを抱える方々にとって、私たちの取り組みが“少しでも背中を押すきっかけになれば”幸いです。
私たちも、共に歩むパートナーとして、いつでもご相談をお待ちしています。
もし一歩踏み出したくなったら、いつでもYYSystemホームページのお問い合わせフォームより声を届けてください。
私たちはその声に、真正面から向き合います。
お問い合わせ 個人|リアルタイム音声認識アプリYYSystem – アプリを使って会話を記録、保存、分析
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